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洞川

奥の稜線

大原山やその周辺の自然に包まれながら、人が「景色」を「風景」として認識する方法について考えていた。そして、天川にまつわる様々な話を聞くうちに、見立てという行為が、その方法のひとつとして浮かびあがった。

見立てによって意味が与えられると、見知らぬ何かが特定の何かとして認識される。人はそうして捉えたものを伝え、大切にしていくのだろうと思った。

私はこの場所に、古くから人々が行き交い、親しみ、畏れてきた天川の山脈を見た。縦に伸びる木々や苔むした倒木をその山脈に見立て、森の中に色面を配置することで、そこで目にする「景色」を、ひとときのあいだ「風景」として提示した。

公開期間:2021年10月9日–11月28日

撮影:都甲ユウタ

波と表面

名付けようとする前に
まず抱きしめる

谷川俊太郎

山々から放たれた蒸気が洞川のまちをゆっくりと包み込んでいく。きっと長い間繰り返されてきたこの現象を、苔生した倒木の森に重ねたのが《奥の稜線》だ。しかし、この作品に寄せて谷川俊太郎さんが詠んでくれた詩は、見透かすように「まだ早い。焦らなくていい」とささやきかけてくる。そう受け取った私は、もう一度、蒸気の揺れるあの眺めを思い出しながら、「抱きしめる」方法を探し始めた。

洞川に住む小野田阿沙さんは対話の中で、木々や苔、土、人や動物から生じるものが空気に含まれて肌に触れ、その感覚を通して自分が立っている場所を認識するのだと話してくれた。私にとってその言葉は、あの眺めをより理解するための手引きのように思えた。

その後、初めて洞川の山に登った。道中、木立の間から差す朝の光に、木、苔、石、土など、辺りを囲む住人たちは蒸気で応じる。その光景を傍らに歩を進めるうち、今度は自分からも同じものが立ち上がってきた。どうやら私たち自身も、あの眺めを形作る一員だったらしい。

肌に触れる空気の動きを、波として描いてみる。その方法で「抱きしめる」ことを試してみよう。そう思って描いた「波」は、洞川の山々を示す等高線である。

公開期間:2023年9月16日–2024年11月30日

撮影:上野千蔵 (@senzo_ueno)